その日は、妻と昼ごはんでも食べに行こうとなり車で出かけて、まだ一度も行ったことが無いそば屋に入った。
車から降りて店を見てみると、落ち着いた色の壁と、まだ新しい建物。
雰囲気は良い感じで、おいしいものを食べさせてくれる期待を高めてくれる。
「ガラガラ」と入り口の引き戸を開ける。
「いらっしゃいませ」と元気の良い声。
うん、いいぞいいぞ、接客も合格。
でも、お昼時なのにお客が1人もいない。
あ、これは失敗したかも。
いままでに、外食について学んだことがある。
それは、昼食時にお客が少ない店は、美味しくないということ。
つまり、地元の人に人気がないから、ガラガラなんだよね。
旅行に行ったときは、混雑時にもかかわらず空いている店は避けるようにしている。
せっかくの旅行だから、美味しいものを食べたいからね。
今回は、これから他の店に行くのも面倒だし、そばならそんなにマズイものも出さないだろうと思ったのだ。
気を取り直して、メニューを見て、なにを食べようか考える。
メニューには、温かいのと冷たいそばが8種類づつくらいある。
そば専門店だから、生産地とか、そば粉の割合とか、こだわりとか、何か書いてあるのかと思ったけれど、何も書いてない。
うーん、困った、何を頼もう。
結局、ボクは鴨南ばん、妻はランチセットを注文した。
10分くらいすると、愛想の良い主人がそばを運んできた。
ひとくち、ダシをすする。
塩味が尖っていて、魚系のダシが感じられない。???
こんな汁は、初めてかも。美味しくない。
つぎは、そばを食べる。
コシが無く、つなぎが多そうな感じのそば。
「エッ、これってもしかして袋麺」と思っちゃうくらい。
どん兵衛のほうが、ぜんぜん美味しい。
妻に小声で感想を聞くと、ふつうに美味しいわよと言う。
妻はそばには、こだわりが無いそうだ。
ボクは、自分でそばを打つほどのそば好きなんで、専門店には大きな期待をしてしまう。
ふぅー、よくこれで営業を続けて行けるな。
おせっかいだけど、心配してしまう。
やる気が無いわけではなさそうなんだけど、味がマズイ。
雰囲気の良い店なのに、すごくもったいない気がする。
そばのダシの味なんか、簡単に旨くできるのに。
もったいないなー。