はちみつといえば、花から分泌された甘い液体をミツバチが集めたままのものだと思うかもしれませんが、そうではありません。
ミツバチが集めてくる花蜜は、糖分(ショ糖)ばかりでビタミン、ミネラル類は、ほとんど含んでいません。
でもはちみつには、ビタミン、ミネラル、酵素、その他の成分が含まれます。これは、どうしてでしょうか?
花蜜からはちみつへの物理的変化
ミツバチは、花蜜や花粉を集めるために花を訪れます。そこでミツバチは、花蜜を吸い蜜胃という花蜜専用の胃袋に貯えます。蜜胃は、胃袋でも、食べ物を消化する器官でもなく、花蜜を一時的に入れる入れ物です。
花蜜をお腹一杯に貯えたミツバチは、巣に帰ります。そこでまだ外に出て行かないで、巣の中で働いている若いミツバチに、口移しで花蜜を渡します。この若いミツバチは、内勤蜂と呼ばれます。
内勤蜂は、口器で花蜜を薄い膜状に引き伸ばして、巣箱内部の高い温度の空気にさらして水分の発散を促します。こういう操作を10分から20分も続けると、花蜜の濃度は3割方高くなります。
こうしてある程度濃度が高められた花蜜は、小さな水滴状に分割されて巣房の内壁へくっつけられます。こうすれば空気にふれる面積が多くなりますので、水分の発散は大幅に促進されます。そして内勤蜂達は、羽でさかんに扇風を行います。
春から夏に掛けて、はちみつがたくさん貯蔵されるときは、夜に巣箱の近くに行くと「ゴー!」という音が聞こえてきます。ミツバチ達が、一生懸命、羽を動かして巣箱内の空気の流通を良くしているのです。
花蜜からはちみつへの科学的変化
以上のような物理的変化と並行して、化学的変化が進んでいきます。花蜜は、濃度が低いだけではなく、その主成分の大部分は、ショ糖です。つまり砂糖と同じものなのです。
だからブドウ糖や果糖を主成分とするはちみつに変化させるには、どのようなことが起こっているのでしょうか?
ミツバチの唾液に含まれるインヴェルターゼ(転化酵素)が、花蜜からはちみつへ変化させるのです。
ミツバチからミツバチへと花蜜を口移しで渡していくときに、この転化酵素が添加されます。そして、花蜜はじょじょに分解してはちみつになって行きます。
はちみつには、老化防止物質も含まれる
はちみつのなかには、老化防止物質と呼ばれる「コリン」「類パロチン」「ガンマーアミノ酪酸」などが含まれます。これは、花蜜には含まれていないものです。
それらは、どこから添加されたのでしょうか?それはローヤルゼリーからのものなのです。
若い内勤蜂は、花蜜を採集蜂から受け取ってハチミツに変化させる作業をします。同時に育児作業も担っています。そのときに咽頭腺からローヤルゼリーを分泌するのですが、ローヤルゼリーがはちみつに混ざるのです。
このようなミツバチの連携プレーによって、花蜜からはちみつが作られます。ビタミン、ミネラル、酵素、その上、老化防止物質まで含まれているはちみつ。
はちみつは、甘いだけでは無く優れた栄養素をたくさん含んでいます。毎日の食生活にうまく取り入れて、健康的な人生を送りたいですね。